2013年12月22日日曜日

麦子さんと



吉田恵輔監督最新作。
過去作はもちろんのこと、
こないだ公開になった「ばしゃ馬さんとビッグマウス」も大好きだし、
本年の締めとして、見に行きました。
ばしゃ馬さんのほうが好みでしたが、
本作もなかなか考えさせられる作品でした。
ただ、同テーマで考えると「四十九日のレシピ」のほうが断然好き。
主演が堀北真希で、麦子さんを演じています。
兄は松田龍平で、2人で慎ましく暮らしている。
そこへ長らく会っていなかった余貴美子演じる母親が現れて、
同居生活が始まるものの、突然その母は亡くなってしまう。
麦子さんは納骨のために訪れた母の故郷で、
これまで知らなかった母のことを知り、
自分にとっての母という存在を見つめ直すという作品です。
麦子は声優を目指すアルバイターで、
日常生活にこれまで一切存在しなかった母親という異物を、
どう扱っていいか分からず、困惑する姿が前半で描かれます。
母親ウザイあるあるが続いて、24年間実家にいた身としては
「あーわかるわー」という共感しまくり。
母親がウザイといって遠ざけるのは、
すぐにはいなくならないという前提だと思いますが、
本作では唐突に母親がガンで亡くなってしまう。
兄の松田龍平は母との思い出があるため、
死を受け入れる訳ですが、麦子には
母との思い出どころか記憶がないから、感情の処理の仕方が分からない。
でも、納骨のために訪れた母の故郷には、
間違いなく母が生きていた証拠がこれでもかと残っているし、
母の若い頃が麦子そっくりということも
自分が娘であることを否が応でも自覚させられる訳です。
さらに追い打ちをかけるのが、母の友人ね。
彼女も麦子の母親同様、離婚していて子どもと離れて暮らしている。
その姿を生きていた頃の母親に重ね合わせてしまう。
そこで逡巡する麦子の姿が愛おしい。
感情表現が不器用な感じを堀北真希がイイ感じに演じてました。
終盤で、その感情が爆発するんですが、心痛みました…
本作は箸休めの小ネタの充実っぷりもナイス!
母と喧嘩しているときに流れるアニメ、
母の友人のBL趣味、ふせえりの拾い食い。
「うわ…」と息詰まることやらせたら天才ですよ、吉田監督。
赤いスイートピーがテーマソングなんですけど、
焦らして、焦らしてからの〜最後ドーン!は
世代じゃない僕でもカタルシスを得ました。
母親のことを大切にしようと思える映画です。

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