2014年3月13日木曜日

銀の匙 Silver Spoon



吉田恵輔監督最新作。
ここ半年くらいで3本公開と、
撮りためてたものが一気に公開されているのでしょうか。
何にせよ、大好きな監督の1人なので、
立て続けに見れる幸せを噛み締めつつ、鑑賞いたしました。
最近の2作よりもさらにバジェットが大きくて、TV資本。
しかも原作は漫画(アニメ)という最近のトレンド全開で、
おもしろくない日本映画の特徴を兼ね備えていますが…
そんなのは杞憂で十分に楽しめたよ!
結局、原作とかTVシリーズの続きとか関係なくて、
作り手の心意気次第なんだなーと改めて思いました。

主人公は八軒という高校1年生の男の子。
彼は中学受験で難関の中高一貫に入るものの、
周りのレベルについていけなくて落第。
すべてから逃げ出すために、全寮制の農業高校に入学。
周りは実家が1次産業に携わる同級生ばかりの中で、
都会っ子の彼がそこで奮闘するという青春物語です。
最初、顔も映らない高校生同士の会話から始まるんですが、
この時点で本作に登場する高校生が世間一般で、
ステレオタイプに語られるものとは異なり、
異常なくらい将来へのビジョンが
しっかりしていることが分かります。
そして、クラス内の自己紹介が始まり、それぞれが
「実家を継いで〜」という夢を語る中、
明確な夢を持たない八軒が珍しいという状態。
そこからは異文化交流ものな流れで、
知ってるようで知らない畜産業や酪農業の現実が
八軒に突きつけられる。
スーパーに並んでる食品は当然、映画で示されるように、
加工されて陳列されている訳ですが、
あらためて見ると、驚きの連続。
普段接しているものに横たわっている現実を直視させてくれる。
八軒君と観客は同じスタンスだから、映画へのライド性は抜群。
彼は中高一貫を離脱したことをルサンチマンとして抱えていて、
しかも、これから取り組むことは全く知らない世界。
このダブルパンチで非常に悩む。
これらを踏まえて、友人との関係性や高校での生活を通じて、
彼が成長していく様が描かれる訳ですが、
Once Againものとしての完成度が本当に素晴らしいと思います。
(ちょっとセリフで説明し過ぎ感は否めないけれど)
ルサンチマンを抱えてるがゆえに、その境遇を動物と重ね合わせたり。
競争社会に負け、逃げたことをとても気にしている彼が、
目の前にある現実と向き合うことで成長していく訳です。
中村獅童演じる先生のセリフは露骨過ぎるかもしれないけど、
そういうことも言えるよねーとシミジミ。

なんといっても実習で世話することになった豚の話が、
とても好きでした。生きとし生ける物同士が支え合うことで、
世界は成立していて、give & takeが世の常。
その向き合い方も良かったな〜
この点でいうと、豚の屠殺シーンも衝撃。
海外だとAnimal Welfareがとても厳しいから、
絶対にこのシーンは見れなかったと思います。
そして、高校において外様である彼の成長が
周りにも影響を与えていくのが後半。
特に好きだったのは同級生の駒場君のシークエンス。
最初はやる気が無くて、ナメた態度を取る八軒に、
厳しく当たっているんだけど、
彼の背景が判明したときに分かる、その覚悟たるや…
ここでも農業や畜産業の知られざる現実が露呈されます。
高校もやめなければならなくなるんですが、
引っ越しする際に自分の母親へ宣言するセリフで、
涙腺決壊!号泣メーン!それも八軒君の影響な訳です。
あと本作はメインキャストに有名な俳優を使わず、
若手中心なのも好感大。
その代わり、脇を固めるオトナは実力派を配置。
とりま、有名なやつ出しとけや的なニュアンスは皆無。
(哀川翔と竹内力が兄弟という設定はヤバかったw)
ただ、終盤のレースのくだりとか、感動をゴリ押ししてくるのとかは、
好きじゃないという人がいるのかも…とは思います。
一番アレだなーと思ったのは音楽の使い方。
ポイントとなるところで、「どや〜!」みたいな音楽が
何度も鳴ると、冷めちゃうんだよね…
でも、そんなことは些細なことで、取り上げられた題材と、
そこから見えてくるテーマ性にヤラレタ!
「食」を大切にしている人は是非!

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