2014年4月19日土曜日

アクト・オブ・キリング



初めてこの映画の話を聞いたのは、
信頼する男、マツマエ氏からだったと記憶している。
そこから町山さんのプッシュやデヴィ事変もあり、話題沸騰の本作。
見終わった後、とんでもないものを見てしまった感覚と、
強烈な嫌悪感に襲われました。
分かりやすい「悪」である虐殺という行為だけではなく、
人間の持つイヤな部分がめちゃくちゃ凝縮されてる。
自分が知らない世界の現実を知ることは
興味深いんだけど、この現実は辛かったなぁ。。。

Act of killing、直訳すれば「殺し方」でしょうか。
1960年代にインドネシアで行われた大量虐殺を
映画撮影ということで加害者に再現させ、
その撮影の様子をアンワルという主人公を
メインに追ったドキュメンタリーです。
冒頭、瀧の前で歌って、踊るシーンから始まり、
この時点で不穏な雰囲気がただよいまくり。
前半はアンワルという主人公がどういう人物なのか、
および虐殺の全貌が明らかにされていきます。
まず度肝抜かれるのが、
彼が嬉々として自分の過去の行いを語る点ですよね。
当時の事務所上へ行き、
「初めは殴っててんけど〜血出るからなぁ〜」と言い、
ヒモを柱にくくりつけて、それを人の首に巻き、
「これ引っ張って殺してましたわ〜血も出ないし、楽なんすわ〜」
虐殺の対象としていたのが、共産主義者。
その選定は同じビル内の新聞社の人が決めてたとか。
(明確な思想とか特にないのが一層怖い)
この一連の流れの段階で、
こんな奴らが現実世界にいるのか…と頭クラクラ。
もし彼らの話してたことが事実だとすれば、
もっと苦しんで生きていてもいいはずなのに、
良かれと思ってやったことだから、なんの罪悪感も感じてない。
しかも、現政権が虐殺支持側っていうね。。。
彼らの経験してきたことをベースに
映画製作が進められる中で、コメディタッチのところも多く、
なかでもアンワルの舎弟のマツコデラックスに持っていかれるw
酷い現実が語られる中で、
彼の女装で映画が余計にケイオス化していくのは
笑えるようで笑えないアンビバレントな感情にさせられる。
この映画で一番イヤだなーと思ったのは、
途中で合流してくるアンワルの盟友。
「オレは苦しんで精神科にかかったりした」とか言う割に、
全く後悔の気持ちとか見れない言動が多いし、
家族とのありきたりな日常をのうのうと生きているのは
なんか全く納得できなかったな〜
特に華僑を道で出会ったら、片っ端から刺し殺してた話すんの、
ホンマに嫌悪感しかなかったです。
後半にかけては、アンワルが映画内で被害者役を
演じさせられるシークエンス。
本作はここがかなりの見所だと思います。
自分の人形が首チョンパされたり、尋問されたり。
序所に被害者への謝罪の気持ちが芽生え始める。
さらに予告編でも使われていたおおがかりな大虐殺の再現シーン。
ここの地獄っぷりはホントに目を覆いたくなる。
あまりの衝撃で演じていた子どもは泣きじゃくるし、
おばあさんはショックで動けなくなったり。
再現でこんだけ酷いんだったら、実際は…と考えると、
身の毛もよだつ思いになる。
そして、本作の恐ろしいところはここから。
バランスの取り方が非常にグレーで、
アンワルが被害者の気持ちを理解し、
反省し始めるのかと思いきや、そうでもないんじゃない?
と思わせる言動がちらほら見え隠れする。
どういうことかと言えば、カメラの存在を意識して、
「こういうこと言った方がドラマになるんじゃね?」
というスタンスを取っているように見えたんです。
僕は上記のように思いましたが、
見る人によって解釈が別れる余白の残し方をしてると思います。
とにもかくにも必見の映画だと思います。

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