2014年5月20日火曜日

ブルージャスミン



ウディ・アレン監督作品。
ミッドナイト・イン・パリ以来。
彼の作品は見たいと思うんだけど、
あまりに多作過ぎて、どこから手を付けるべきか分からず、
放置しています…最新作を追っかけるところから
始めようと思い立ち、見てみました。
予告編を何回か見ていて、その段階で結構パンチ効いてそう〜
と思ってたら、予想以上に鋭角に殴られた感じw
マジで一切の容赦がない、突き放したストーリー展開は
胸が詰まると同時に、逆に清々しさを覚えるくらい。
一方で主人公のジャスミンのような
生き方をしている人にとっては地獄の2時間だと思います。

主人公はタイトルにもあるジャスミンという女性で、
演じるのはケイト・ブランシェット。
本名はジャネットなんだけど、平凡過ぎて自ら改名したとか、
自分がいかにセレブリティかを偶然飛行機で
隣だったおばあさんに一方的に話す冒頭のシーンで
彼女がどんな人間か分かるようになっています。
見た目はオシャレでハイソなんだけど、
「コイツちょっとおかしいな」と思わせる行動を取る。
大学を中退し、お金持ちの男性と結婚。
NYで悠々自適なセレブライフを送ってきたのに、
旦那が金銭問題で逮捕され、自分も一文無し。
頼れるのがサンフランシスコに住む妹のジンジャー
ジャスミンとは正反対の貧乏な生活を送る
子持ちのバツイチ。彼氏はDQN系。
ジンジャーのもとで過ごす彼女が惨めと感じる現在と、
セレブ時代の栄枯盛衰を交互に見せていく鬼畜演出で
物語は進んでいきます。
そもそも僕はジャスミンみたいな、
自分では何もしてないくせに、それを自分のものみたいに
誇示してくるパラサイトクソ野郎が大嫌いなんですが、
それを大前提にしても、ジャスミンがあまりに不憫!
ラッパーであるDABO氏が著書で書いていた
「10代で見た目でモテてて油断して、
自分磨くの忘れた20代迎えた男は悲惨」
というパンチラインを想起しました。
ジャスミンは表面的に着飾る能力に長けているんだけど、
それはあくまでも上っ面で本質的にはemptyであることが
様々なシーンを通じて描かれていました。
PC→インテリア・コーディネーターというのは最たるもの。
自分で何もできないくせに、
人のことは金、地位、名誉で値踏みするんですよね〜
その彼女が現実に目を向けず、
夢 a.k.a 呪いの中でもがく姿を見ていると、
ざまあ!と思うんだけど、どこかファニーでもある。
(世間知らずという言葉で説明できるギリギリの逃げという
ウディ・アレンの最低限の優しさは用意されている)
一方で妹のジャスミンとは対照的な性格。
人間臭くて、照れがないし、他人がどう思うとか関係なく、
絶対的な価値観で生きている生粋のボケ視点。
これを配置することでジャスミンの哀れさが引き立っていました。
ジャスミンのような人が嫌いと言いましたが、
相対的に自分の立ち位置を確認し、
他人をやっかんだりする部分は人間誰しも持っている。
それをMAXまで増幅したキャラがジャスミンな訳ですが、
誰にでもそういう瞬間はあるよね〜と
物語が進むにつれて思い直してました。
特にパーティーで出会った国務省の人とのシークエンス。
この辺りから相当キツかったな…
全く過去から学んでなくて、
実体のない過去の自分を他人の力を借りて実現しようとする。
彼女には血はつながっていないものの、
息子が1人いて、彼は父親が逮捕された後、家を出て行ってしまった。
その彼とジャスミンが再会するシーンで、
息子がずばっー!と100点の回答をする。
そっからの終盤は現実も地獄だし、
過去のセレブ生活の破綻原因もあきらかになるしで、
あぁ辛い…と思うことやまの如し。
特にフラれて家に帰ってきたときのジャスミンの顔、姿よ。。
「ボロ雑巾を人間で表現したら、こんな感じです」
と思わさせられましたw
人のことを客体化して、
なおかつそれが自分の価値であるかのごとく、
振る舞う人間が見る地獄の決定版!

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