2014年5月4日日曜日

ある過去の行方



イラン人監督の作品。
前作の「別離」という映画がイラン映画として
初めてアカデミー外国語映画賞を獲得しています。
別離はまだ見れてないけど、
先にこっちから見ちゃおうといことで。
噂には聞いてましたが、
特濃作品でグイグイ引き込まれました。
登場人物は皆どこか欠けた部分があり、
それを映画を通じて、ジワジワあぶり出していく感じ。
しかも、それらが観客に突きつけられてくる。
是枝監督の作品を見た後に近い感触。
主人公はフランスに住むマリーという女性。
この人自身は、2人の子どもを持つシングルマザー
マリーとイラン人のアーマドが空港で待ち合わせるところから物語が始まります。
この2人は元夫婦なんだけど、離婚手続きが完了してない。
マリーはサミールという子持ちの男性と再婚するため、
アーマドと正式に離婚するものの、
大人3人とそれぞれの子どもを中心に結婚とか離婚に関する、
泥沼の物語が展開されるという話です。
ここまでざっくりと説明しましたが、
映画の作りとしては非常にミニマルで、
人物関係やその背景の説明的なシークエンスはなく、
劇中で交わされる会話の中で、
それらをさりげなく分からせてくるのが特徴かと思います。
だから、前半はそういう人物理解で興味が持続していく。
最初は少し退屈なんだけど、
1つ1つの事実を把握していくにしたがって、
物語にグイグイ引き込まれていきます。
(とくにサミールには奥さんがいて、
その奥さんが自殺未遂で植物状態という
事実が明らかになったところから)
アーマドと観客は様々な事情を知らないという点では、
1番感情移入しやすいと思います。
再婚する2人が自分達の関係を棚に上げて、
「それは違う!」とか言っているのを聞くと、
「正気か?!」と言いたくなる場面もしばしば。
何よりも辛かったのが、子どもの立場。
大人たちの勝手な都合で振り回される姿は見てて辛い。
それが一事が万事その調子といいますか。
(子どもが寝る場所を決めるところからも分かる。)
不倫自体が良い/悪いの議論は
100歩譲ったところで、子どもを蔑ろにするのは
ダメだよなーと強く思いました。
また、長女のとった行動が痛々しくて、
やっちゃいけないことだし、
それが産んだ結果があまりに惨いんだけど、
簡単には怒れないというか。
物語全体に漂うアンビバレントな雰囲気は
常に観客にかんがえさせるような作りとなっていて、
是枝監督の映画を見ている感覚に近いと思いました。
サミールが顕著なんだけど、
他者に対する想像力の欠如というか。
自分の考えや見方がすべてだという閉じた思考回路は
良くないよなーと身につまされました…
ラストにかけては、過去に起こったことは
もういいから「今」どうすべきなのか?
ということにシフトしていく。
それは一見前向きで建設的なんだけど、
やっぱり過去があって今がある訳で、
そこを蓋して先には進めない。
それがラストシーンで示されていると思います。
ワンショットで一旦あきらめかけるところ、
印象的なラストショット含めて良かったです。
結構重い話ではありますが、僕は大好きでした。

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