2014年6月1日日曜日

インサイド・ルーウィン・デイビス 名もなき男の歌



映画の日ということでコーエン兄弟監督の最新作を見てきました。
彼らの作品を網羅してる訳ではありませんが、
サスペンス系統のバーバーやノーカントリーは大好きです。
最近観たバーン・アフターリーディングも楽しんだので、
期待して見に行ったら、やっぱりおもしれぇ!って感じでした。
彼ら特有のシニカルさもふんだんに楽しめるし、
人生についても考えさせられる重厚さも兼ね備えた作品。
主人公はタイトル通り、ルーウィンという男。
彼はミュージシャンで、元々はデュオで活動してたんですが、
相方が自殺してしまい、やむなくソロで活動している。
とにかくお金がなくて、家も無く、
寝床はいつも人の家のカウチ。
そんな彼の周辺で起こる1週間近くの出来事を描いた物語です。
ちょっとした事件は起こるけど、
派手な何かが起こる訳でないので、退屈と思うかもしれません。
僕も寝そうになったりしたんですが、
そのタイミングでギョッとする描写が放り込まれる。
冒頭はルーウィンが歌うシーンから始まって、
グッドなフォークソングだなぁと思っていたら、
店の裏でボコボコにされてしまう。
コーエン兄弟の映画見てていつも思うけど、
殴った音がめちゃくちゃ痛そうなんよね〜
この映画でその要素が必要かどうかはさておきw
人物紹介とか背景の説明は特になく、
淡々と物語が進んでいくので、
前半は人物関係を追う感じで見てました。
この映画でオモシロいのが、ルーウィンの取る行動が、
ほとんどすべてと言っていいほど裏目に出るところ。
その徹底っぷりは凄まじく、ホントに一個も上手くいかない。
夢 a.k.a 呪いを追いかけるルーウィンは
様々な方向から退路を断たれていく。
ミュージシャンである自意識との折り合いを見てると
一体オレがどこの誰か?」という
2 FACEのNORIKIYOのラインを想起したりしました。
売れなかったころのエピソードとしては最高にオモシロいけど、
それは売れてから相対的に見てオモシロいのであって、
目の前にある現実はとてもシビアなもの。
それと対峙しながら、何とか世の中をサバイブしようとする
ルーウィンの姿は胸にグッとくるものがあります。
それと同時にシニカルに笑える要素もあるのが楽しくて、
僕が好きだったのは彼女の妊娠と、猫の一連の取り扱い。
彼女役をキャリーマリガンが演じていて、
それはもうとてもカワイイんですが、
彼をののしる言葉の汚さがハンパない!
「こんな悪口よく思いつくな!」という言葉が
マシンガンの如く飛び出す様は、
見た目とのギャップで相当オモシロかったです。
あと猫は物語全体で象徴的に使われてるんですが、
飼い主にルーウィンが猫を返しにいくシーンが最高。
特に教授の奥さんの悪気ないけどウザい感じや、
タマタマのくだりは劇場全体が沸いてました。
ラストは冒頭のシーンと同じ場面がカットが
微妙に変わってもう1回流れるんだけど、
その日のライブに至るまでの彼が生きてきた
「人生 a.k.a ストーリー」を見てるから何倍も沁みる。
どんだけ辛いことがあったとしても、
もしかしたら自分に才能が無かったとしても、
なにがあったとしても、歌うしかないんだよ!
それはもはや動物の帰巣本能の如く。
音楽好きな人は見て損無し!

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