2014年9月15日月曜日

物語る私たち


サラ・ポーリー監督の最新作。
彼女が撮ったTake This Waltzという作品がかなり好きで、
元々俳優として有名でしたが、監督業にも要注目な彼女。
本作はセルフドキュメンタリーと呼ばれるもので、
自分の出自を追っていく話なんですが、
めちゃくちゃオモシロかったですねー
見た感触としては砂田麻美監督のエンディングノートに近かったです。
あちらは家族の死に肉薄したものでしたが、本作は出自の話。
そして父になるの子どもが自ら、
「ホンマにオレの父親かな?」と疑問を抱き、
ドキュメンタリー映画を撮ったといえば分かりやすいでしょうか?笑
サラが兄姉に父と似てないなーと冗談で言っていたことを覚えてて、
自分の生物学上の父が別にいるのでは?と思い、
調べた結果を追ったドキュメンタリーです。
基本は父のモノローグが軸となっていて、
母と出会ってから結婚し、サラが産まれるまでを語る。
それに加えて、兄姉や両親の友人、母の共演者のインタビュー、
父母が若い頃の当時の映像を交えつつ、
徐々に父が誰なのかを浮き彫りにしていきます。
サラは母が40歳過ぎてからの子どもなので、
兄や姉もサラが子どもの頃はそこそこの年齢で、
それぞれが見た家族関係やサラに関する語りがオモシロい。
冒頭で姉が「普通の家族の話なんて、誰が興味あるの?」
と言うシーンがありますが、本作で紐解かれる話は、
十分ドラマティックで、トラジェディー。
そんじょそこらである話ではないけれど、
どの家族にもそれぞれ問題があるのは事実な訳で。
(それをトコトン理詰めで突き詰めてないだけ)
そういう意味で、自分とは全く関係ないことにようには思えないし、
ある種、推理小説のような展開なので、
グイグイ引き込まれていきました。
人によるかとは思うんですが、自分の出自を確認するのが怖くて、
両親の出会いとか一度聞いた気がするけど、
今は覚えてないから脅迫観念で忘れてるんだと思う。笑
それをサラはトコトンまで追い込んでて、スゲーなと。
お父さんも劇中で言ってましたが、「サディストな監督」だと思います。
(実は父親が違うってことを、お父さんに読ませるんだから)
探していく過程で、思いも寄らない形で、
生物学上の父が見つかる訳ですが、彼と芸術論を戦わせるのも最高で。
真実に辿り着くには、当事者の事実の羅列からしか産まれてこない
という考え方と、色んな人それぞれの知っている事実から
見えてくるのが真実だという考えのバトルは興味深かったなー
8mm映像のとんでもない秘密が終盤に明かされるんですが、
これも上記の論と絡めて考えるとオモシロい構造だと思います。
さらに本作が特徴的なのは、撮影している様子も
映画の素材として使っているところ。
そこでポロッと本音が出たり、オモシロい話が撮れたりしてる。
ハッキリ言って、母親を悪者にすることだって、
できたはずなのに皆が寛大な姿勢だったところは、
国柄の違いなのかなーと。日本で同じ題材だったら、
母親の貞操観が問題視されて終わりになる気がします。
多様な見方、他人を受け止める姿勢が成熟さを物語る。
家族に関して改めて考えさせられる映画でございました。

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