2014年9月23日火曜日

舞妓はレディ



周防正行監督最新作、前作の終の信託が、
かなりハードな内容だったのに対して、
本作はかなりPOPでカワイイ作品になっていました。
ミュージカルとして楽しめるポイントがたくさんあるし、
少女の成長物語としてオモシロい。
ただ、ミュージカルという構造を取ったがゆえに、
話運びに難ありな部分も散見されたのは事実。
しかし、もう僕もすっかりオジさんでして、
若い女の子が自分のやりたいことに対して、
純粋にガムシャラに取り組んでいる姿、
それだけでグッときて、「ウル」が発動しちゃう訳。
(あまちゃん以降、そのモードは加速しています。笑)
大人になるとどうしても、無駄を排除し、
合理化されたものを追求しがちだし、
一億総ツッコミ社会の中で、
愛のない正論だらけな今の社会の雰囲気において、
こういった様式美、伝統のオモシロさを見せてくれた!
という意味では良いなぁと思いました。
主人公は春子という女の子で、津軽から舞妓になるため、
単身で京都へやってくる。誰の紹介でもない彼女は、
当然ながら、女将に断られるんだけれど、
そこに居合わせた長谷川博己演じる言語学者が後見人となり、
彼と2人3脚で京ことばをマスターしつつ、
舞妓の修行にも励み、舞妓になろうとするお話。
春子は幼い頃に両親を亡くしていて、ジジババっ子。
津軽で育ち、鹿児島出身の婆の影響で、
方言がとんでもないことになっていて、
ほとんど何言ってるか分からない。笑
そんな登場の仕方なんだけど、
最初のミュージカルシーンが彼女が歌うところで、
声の迫力、歌の上手さで心がグッと掴まれる。
これ以降のミュージカルシーンがもう逐一最高で、
それだけでかなり満足。
竹中直人、草刈民代、高嶋政宏、長谷川博己という、
蒼々たるメンツが「大ボケ」のスタンスで、
全力でミュージカルシーンを見せてくれます。
「くだらねぇ〜」と言いながらもヤミツキになる感じ。
修行の様子を通じて、舞妓がどういったものか、
というのが分かる作りなのも良かったです。
修行で追い込まれて声が出なくなったり、
ひたすた「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」を
繰り返して、奮闘する春子の姿はとにかく愛おしい。
けれど、彼女がどうして舞妓になりたいかの、
描き込みが足りないように感じました。
母親が舞妓だったからというのは1つの理由なんでしょうが、
過去の描写や母との思い出など、
いくらでもやりようはあったように思うんだけれど…
とくに女将さんが春子に母が舞妓時代の話をするところがあるんですが、
あのシーンが全部セリフで説明しちゃうのもったいないなぁと。
それこそ、女将さんの初恋の話は端折って、
ミュージカルで見せちゃえば良かったのに。
舞妓という未完成なものを愛でる=アイドルを愛でるという形で、
春子の背景をなるべく排除して、人形化させてるのかもしれないけれど、
ドラマとしては、背景欲しいなーと思いました。
あと濱田岳演じる大学院生が言う、
「舞妓は伝統を隠れ蓑にした水商売だ」という発言も回収されない。
彼の母が芸子で、彼自身が妾の子という設定ゆえのことなんだけど、
風呂敷を広げるわりに放ったらかしというか。
最後の京ことばを話すくだりも「えっ?」って感じだったし。
と文句をつらつら述べてまいりましたが、
彼女が舞妓になって舞う姿や、そこで明らかにされる大人の優しさは、
ホロリと泣いてしまいました。
そしてラストに岸部一徳が言う「若さ」の定義に膝を打ち、
単純な年齢だけじゃないと思ったりしました。
幸せな気持ちで劇場を出れるんだから、
それだけでいいじゃないと思えば楽しい映画だと思います。

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