2014年11月2日日曜日

トム・アット・ザ・ファーム



わたしはロランスを撮ったグサヴィエ・ドラン監督最新作。
ロランスは劇場で見逃したので、今回は劇場で!
と、気合いを入れて見てきました。
ロランスとは全く異なるサイコスリラーでしたが、
めちゃくちゃオモシロかったです。
まだ25歳というんだから、末恐ろしい話です。
見ているときに近いなぁと思ったのは、
ヒッチコックの作品群。とくにサイコですね。
そのぐらいの衝撃を受けることは間違いないです。
主人公は監督のドラン自身が演じるトムという青年。
舞台はカナダで、トムはモントリオールで広告の仕事をしている。
ギョームという同僚が亡くなってしまい、
その葬儀でケベック州の田舎を訪ねる。
この2人の関係はただの同僚ではなくゲイカップルなんだけど、
実家ではその事実は隠されていて、
サラという女の子が彼女という設定で…という話。
冒頭、青の絵筆で抽象的なことが白い布に書きつけられた後、
田舎町の空撮の映像とともに荘厳な音楽が流れ、
壮大な形で物語は始まっていきます。
壮大なのは初めだけで、中身は極めてミニマル。
主な登場人物はトム、ギョームの母、兄とサラの4人だけ。
葬儀で訪れたトムはギョームの実家に泊まり、
寝ていたところを兄のフランシスにいきなり襲われて、
「母にギョームとの本当の関係を話したらブチのめすからな」
と言われ、結婚式で優等生な弔辞をしろと脅される。
しかし、葬儀のときに感極まってしまい、
結局弔辞を述べないまま、葬儀は終了。
フランスシスは怒りまくりで、
トイレの個室で執拗なまでにビンタしたり、
トウモロコシ畑でトムをボコボコにしてしまう。
いわゆる閉鎖系村社会にトムは放り込まれてしまった訳です。
しかも、村社会の中でもさらに孤立した家族であることが
物語が進むにつれて分かってくる。
とにかく見ている間、ずっとハラハラさせられます。
出てくる人物の皆が良い意味で狂気を秘めていて、
明らかに異常なんだけど、魅力的なんだよなー
とくにフランシスはキャラが「マヂ強烈」で、
母親のコントロール下の暴力性ということから、
どうしたってサイコのアイツを思い出さずにいられない。
マチズモの象徴だなぁと思っていたら、
ラストにこれでもか!という形で回収されていました。
トムとフランシスの関係性が非常に官能的で、
2人が話す距離が異常に近い。
タンゴのシーンや夜の街でのシーンは、
うわぁ…って思わず言いたくなる。
そこに潜む艶かしさは何とも言えない味わい。
それぞれの欠損している部分を埋め合うかの如く、
トムはストックホルム症候群となり、
フランシスを支えるんだという気持ちに変化していく姿は、
こうやって取り込まれていくのか…と。
物語自体もサイコスリラーでヒッチコックぽいんですが、
あのバーナード・ハーマン臭漂う音楽でも、
その要素が補完されています。
あと撮り方もオモシロくて、
前半は引きのショットが多いんですが、
後半にかけてはクローズアップを多用して、
感情の高ぶりを煽ってきます。
とくに4人がギョームの思い出の品を取り囲むシーンは、
母親の怪演ぶりも含め、とても好きでした。
家の外でのトムとフランシスのシーンでは、
ワイドで撮っていて、躍動感に満ちあふれている。
最後のescapeとなるきっかけが、
たまたま入ったバーで聞くエピソード。
恐えーよ!と思わず言いたくなる。
その後、ガソスタで「あいつもしかして…」の
焦らし演出も素晴らしかったなぁ。
こいつは相当いい」と5lackばりに言いたくなる、
本当に素晴らしい作品なので是非!

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