2014年11月18日火曜日

紙の月



桐島、部活やめるってよの吉田大八監督最新作。
結構前に公開を知ったので、
それまでに予習しようと思ってたけど、
結局過去作を見ることも無く鑑賞いたしました。
そんなことはどうでもいいんですが、
本当に本当に恐い映画で見終わった後味の悪さは、
今年イチかもしれません。(disじゃないです)
これはもうホラー映画だよ!
金という生々しさと人間の一瞬の隙をかけ合わせた結果、
胸が張りつめ続けて、軽くエズくレベルの仕上がりでした。
宮沢りえが演じるリカは銀行で働く契約社員。
個人の資産運用の営業を担当しています。
結婚していて、子どもはおらず、旦那と2人暮らしの、
どこにでもいそうな、ごく普通の主婦。
彼女が営業で訪れたおじいさんの孫と、
ひょんなことから不倫関係に陥り、
会社のお金を横領してしまい…というお話。
主人公は宮沢りえ演じるリカ。
真面目でどこにでもいそうな人でも、
一旦悪の道に手を染めてしまうと、
取り返しのつかない事態になってしまうのが痛々しい。
すげー悪そうな人が悪いことするのは、
咀嚼できるんだけど、そんな風に見えない人が、
自分の欲望の赴くがままに横領を進めていくんだから、
見ている自分に起こるのでは?と思わさせる、
ライド性の高さも本作の魅力だと思います。
うわ〜と思ったのが、最初に会社のお金に手を付けるシーン。
買い物の際に手持ちが足りなくて、
営業で回収したお金を一時的に借りて、
後で銀行でおろして元に戻すという作業。
お金には目印が付いている訳じゃないから、
戻せば本人以外は誰も気付かない。
けれど、得体の知れない背徳感に襲われる。
こんな経験は皆にあるのではないでしょうか?
何が彼女を狂わせたかといえば、愛なんですな〜
不倫相手は池松壮亮が演じているんですが、
あのテディベア感というか年上女性キラーっぷりを
いかんなく発揮していました。
この2人の不倫関係が始まるシーンは、
明確な動機が見えない作りになっているんですが、
監督のインタビューを聞くと、
それはわざとそうしているみたいで、
男女の愛に明確な理屈が存在しなくても、
結果的にそうなった勢いというものが描かれています。
それに至までの映像の積み重ねがあることで、
観客が自然に入り込むことができる。
とくに一連の地下鉄のショットは素晴らしくて、
階段で足見えたとき、来るんだろうなと分かっていながらも、
「キター!」と思わず言いたくなりました。
(電車内でお互いを見つめ合うショットも印象的)
一旦始まってしまうとノンストップ。
安そうなラブホテルで始まった2人の不倫の舞台が、
ラブホ→シティホテル→スイートルームと発展していったり、
着るものが少しずつ変わっていくんんですが、
これは消費が行動を表すという、伊藤聡さんの、
「ボヴァリー夫人」紹介でまさに説明されていたところ。
スイートでのキャッキャシーンは甘酸っぱいんですが、
帰る朝のショットが一気に青を基調にした色味になる、
光の使い方も「夢は終わり!」って感じで、
オモシロいなぁと思いました。
当然ずっとうまくいく訳もなく、
小林聡美演じる仕事場の先輩の詮索が始まる。
彼女がまた40〜50代特有の縄張りババアを
イイ感じにイヤなバイブス全開で素晴らしかったなぁ。
リカは預金をだまくらかす所から始まり、
証書の偽装まで始めてしまう。
夫の中国転勤も伴い、自宅で偽装作業を行い始めるんですが、
そのDIY感が最高で、ドラッグ工場みたいに見えるのがオモシロい。
音楽もかなりフレッシュで、打ち込み系のPOPめなサウンドや、
英語詞の歌ものを使ったりしていました。
後半にかけてはバレる/バレないサスペンスと化し、
徐々に自転車操業も限界を迎える。開き直りと絶望の狭間。
子どもの頃のエピソードとシンクロさせつつ、
金の出所と行き先を描き、広い意味での「施し」というテーマへ。
これは僕ら友人界隈でいつも揉める、
「チャリティーサークルの募金活動」という話に似ていて、
こんな描き方もあるんだなーと。
そして、ずーっと緊張感を煽ってきたところで、
物理的なカタルシスを迎えるところで完全にノックアウト。
本当に素晴らしい映画でございましたが、NORIKIYO曰く、
「いつも大抵は金金金、
ジョジョに言わせてみ?やれやれだぜ!」

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