2014年12月26日金曜日

バンクーバーの朝日



石井裕也監督最新作ということで見てきました。
今年はぼくたちの家族に続き、2作目とハイペース。
しかも両方ともビッグバジェットで、舟を編む以降、
名実ともに人気監督となっています。
本作はフジテレビ55周年ということで、
スター俳優だらけ、しかも超巨大オープンセットでの撮影と、
相当お金がかかっている映画です。
肝心の中身はというと、
これまで見た同監督の作品では残念な方かな…
他の監督やったら、
もっとヒドいことになっていたのは明らかなので、
上記条件の中で最大限の結果かと思います。
ポイントポイントで、グッとくるシーンや好きなシーンはあります。
でも全体で見ると、うーん…って感じ。
舞台は1930~1940年代のカナダ、バンクーバー。
当時ブラジル移民のように、バンクーバーへ移民した日本人がいて、
その2世たちで構成される野球チームAsahiは、
カナダの野球リーグに参戦している。
体格差から全く勝てず、万年最下位の中、
なんとか勝とうとする姿を日々の生活を交えつつ描いていきます。
当時は差別がガンガンあるし、
日本人はカナダ人の半分の給料で勤勉に働くことから、
カナダ人の仕事を奪う、嫌われた存在。
この移民のことは、本作が無ければ知りえなかったと思います。
その点では初めから興味深く見ることができます。
見所としては、何よりも出ている俳優の豪華さ。
妻夫木君、池松壮亮、勝地涼、
カツンの亀梨君、上地雄輔、をメインとして、
脇には佐藤浩市、高田充希、宮崎あおい、貫地谷しほりなどなど。
もう挙げたらキリがないくらい今ホットな俳優ばかり。
(石井組というべきか、過去作に出てた人が脇固めてる感じ)
この豪華さは大きな魅力でありながら、
物語に散漫さをもたらすという諸刃の剣になってました。
注目すべきは野球チームなんだけど、
その存在がボヤケるといえばいいのか。
さらに舞台がバンクーバーなので、外国人が大量に出てくるんですが、
およそ俳優とは言い難いレベルの演技クオリティ。
カナダ人が書割扱いならまだしも、物語のキーにもなってくるので、
その演技格差を見ると余計に残念な気持ちになりました。
前述したとおり数々の俳優が出ており、
皆素晴らしいんですが、好きだったのが亀梨君と上地雄輔。
「どうせ野球のリアリティー担保要員でしょ~」
と思ってたんですが、そんな自分をぶち殺したいくらい好きでした。
亀梨君は母親が病気してる系男子なんだけど、
抑制していてWETになり過ぎない塩梅がよし。
上地雄輔は多くを語らず、表情や間で見せていく。
予告編でも流れていましたが、カナダ人に勝つ方法として、
編み出されたのがバント、盗塁の足でかせぐ野球。
この方法を妻夫木君が実践するシーンは面白かった!
でも、このバントで勝てるようになった!連戦連勝や!
っていうところはロジックがあまりに不足していて、
大して野球に詳しくありませんが、素直に飲みこみ辛い。
(最後の最後で一応説明つくようにはなっている)
差別する/されるの話も、
この時代に本当にあのニュアンスだったのかなーという疑問は残る。
実話が原作なので、なんとも言えないんだけど、
差別のエグみをもっと描いて欲しかったなーと思います。
あとは成し遂げたとき、つまり野球の試合に勝ったときの演出が、
かなり抑制されていて好きでした。
石井裕也監督でよかったのはこの点で、
他の監督なら、勝つことをクライマックスにして、
音楽や撮り方の工夫で盛り上げていくだろうけど、
ワビサビが効いてて素晴らしかったです。
あとテーマ的には最近の日本に蔓延する
「日本、日本人は実は素晴らしい!」系な中でも、
バランス取れてる方だは思います。
エンドロールが結構げんなりする作りで、
ご本人登場からのラストのテロップまで。
んなこと分かってるよ!と大声で言いたくなりました。
石井裕也監督の作品を見るなら他の作品がオススメです。

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