2014年12月4日木曜日

滝を見にいく



映画の日ということで朝から何見よかなーと考えた結果、
「欲動」という映画を見ようと思ったら、
斎藤工効果で満席という悲劇…
同じ劇場で公開されていた本作を見ました。
南国料理人、横道世之介等でおなじみ沖田修一監督作品。
彼の作品はどれも好きなので期待しておりました。
あんだけ大バジェットで作りまくった、
沖田監督が一からオーディションを行い、
無名の俳優や演技素人のおばさん達を主人公に据え、
本当になんでもない話なんだけど、
人間関係の微妙な機微を丁寧に描くことで成立した奇跡。
といったところでしょうか?
本当にミニマルでルックは地味。
はじめはこれ大丈夫なんかなーと思っているのも束の間、
知らないおばちゃんたちがスクリーンで躍動する、
牧歌的な映画空間はめちゃくちゃ愛おしい。
おばさん7人が紅葉・温泉ツアーに参加。
タイトル通り、滝を見に行くため入山。
ひょんなことから遭難してしまい…という話。
ジャンルでいうと遭難ものなんですが、
その雰囲気は一切なく、言うなれば「ほのぼの遭難」
まず、この7人のキャスティングが絶妙!
もう顔が間違いなさ過ぎるし、
この世にいる色んなタイプのおばさんを体現しています。
冒頭ツアーバスのショットから始まり、
キャラクターをそれぞれの会話や行動から、
一発で分からせる手際の良さ。
さらにその後、長いワンショットで一本の山道を映し出し、
そこを色んなおばさんが通る。
同じ道を通っているのに、異なるリアクションを取るという
キャラの演出。イイ!好きだ!とサムアップ!
徒党を組んでるおばさんもいれば、1人で来てるおばさんもいる。
はじめは知らない人同士だった7人が、
仲良くなったり、悪くなったり。
関係性を眺めているだけで魅力的で惹きつけられます。
遭難という事以外、大した事件は起こらないんだけど、
おばさんたちのキャラを生かしたギミックともいうべき、
演出の数々が本当にオモシロイんだよなー
(思わずぷっと吹いてしまうカワイイやつね)
ミイラ取りがミイラになるスタイルで遭難してしまい、
一晩を山中で明かすことになります。
ここでおばさん設定が活きてくるんですなー
大阪のおばちゃんが、いつでも飴を持ってるとか、
かばんが四次元ポケット状態になっているのを、
目撃したことがある人は多いと思います。
そのおばちゃんが遭難したら…
山ガールたちの楽しい女子会キャンプになるんです!
この発想はfreshで好きでした。
色んなものがあることのリアリティも担保できるし。
また遭難もので描かれる、
自然の下では肩書きや金など関係なく、
その人自身の人間力が問われる、そのflatさも一つの魅力。
しかし、本作ではおばさん界のflatさと
重ね合わせて描いているのがニクくて、
もろにセリフで言わせるのは笑ってしまった。
なんだかんだ言いながらも、協力しながら一晩を乗り切る。
(枯葉に包まれながらのカラオケシーンの愛しさよ…)
朝を迎えた後も、童心に帰ったかのように、
皆でくだらないことして遊ぶ。
とにかく楽しそうに見えるのが素晴らしくて、
特に主人公のジュンジュンの表情ね。
最初は不安で満ちていた彼女の表情が、
遭難という本来ならマイナスの出来事なんだけど、
それをきっかけに表情が良くなっていく。
八千草薫っぽい雰囲気が好きでしたし、
蛇のくだりはめっちゃ笑いました。
行って戻ってくるスタイルで、
はじめの山道ワンショットへもう一度戻るのもナイス。
(個人的には赤いルビーが迫ってくるわ〜が引き金でした)
きっちり滝を見に行き、思い思いの時間を過ごし、
トラクターに揺られてゆっくりと社会へ戻っていく。
もうこの辺になると妖精にも見えてきたよ!
日本のおばさんのcuteさを抽出した傑作。

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