2015年1月18日日曜日

薄氷の殺人


何回か予告編見てて中国映画見てないなーと思いつつ、
ベルリン国際映画祭で金熊賞、男優賞の2冠達成ということで
期待に胸を膨らませながら見てきました。
基本はサスペンスなんですが、
一筋縄ではいかない不思議な映画という印象。
撮り方、色味、シリアスタッチな中にあるユーモア、
一体これはなんだ?!という気持ちになります。
ジョニー・トーのタッチとまでは言いませんが、
それに近いものがあるのは間違いありません。
お話としては中国にある複数の石炭工場から、
遺体の一部が発見されるという殺人事件が発生。
警察が捜査するものの犯人は見つからないまま、
5年経過したのちに別の連続殺人事件が発生。
その捜査線上に浮かんでくるのが、
5年前の殺人事件の被害者の奥さん。
主人公の刑事がなんとか奥さんと関係性を
構築しようとするものの…という話。
(刑事の顔が真鍋大度さんに激似)
冒頭のショットで土が映されるんですが、
てっきり地面かと思いきや、実はトラックの荷台上の土。
そこにあるバラバラになった腕が
石炭工場の中を巡っていくところを追いかけるシーンで
物語が始まっていきます。
この時点で一筋縄ではいかない感じビンビン。
疑わしい奴を捕まえるシーンの唐突な暴力は最高で、
普通ならカット割って臨場感出そうとするんだけど、
引きのワンカットっていう容赦ないところが好きでした。
結局奥さんがほとんど疑われることなく、
捜査が終わりを迎え、5年後に舞台が移るんですが、
そのシームレスな演出が超素晴らしい!
刑事とその同僚がトンネルを走っているんだけど、
画面内の光量が徐々に変化し、グッと車の視点に変わる。
そこからトンネルを抜けると右側に
停止したバイクの横に倒れている男性が。
車の視点のまま、一度通り過ぎるんだけど、
Uターンして戻ってきたら、
倒れているのは主人公の刑事っていうねー
文字で説明してもほとんど伝わっていない気がしますが、
このシーン見るだけでも本作を見る価値あり!
と言いたくなるくらい大好きでした。
そもそも映画全体のルックがかなり特徴的です。
淡い感じの色合いもそうだし、
ワンカットの長回しが多かったり。
映画全体において映像の起伏があるといえばいいのか、
ダイナミズムを感じました。
後半は疑惑の奥さんと刑事のあいだで、
恋愛なのか、捜査なのか分からない、
ギリギリの関係が描かれていきます。
この奥さんのファムファタールっぷりがたまらない。
寄る辺ないんだけど、何か腹にイチモツある感じ。
あと単純にめっちゃ綺麗なので最高です。
刑事は奥さんの働くクリーニング店に通いつめて、
あの手この手で関係性を構築しようと努力するんだけど、
なかなか心を開いてくれない。
そんな中でスケートに2人で行くシーンがあって、
ここが甘酸ポイントでしたねー
奥さんを追いかけてリンク出ちゃうのが好きでした。
あと2人で映画館行くんですが、赤青タイプの3Dメガネかけて
映画見てるシーンは微笑ましいです。
徐々に一連の事件の真相が明らかになるんですが、
それ自体に面白さも新鮮味も特にありません。
けれど、前述したとおりスクリーン上で展開される
面白い、愛おしいことが山ほどあるので、
そっちに心を鷲掴みにされてしまいます。
終盤の観覧車でのやり取りは、
引きのショットとは一転してクローズで撮り、
2人の密接な関係性を描き出しています。
あと刑事がユーロビートで踊り倒すとか、
ラストの花火のくだりは全部は見せないものの、
切なさを感じてたら唐突な幕切れが訪れる、
キレのいいエンディングも素晴らしかったです。
映像ありきなので是非映画館で見てください。

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