2015年3月15日日曜日

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密


チューリングのエニグマ解読を題材にした映画?!
と理系男子の端くれとして予告編で興奮し見てきました。
暗号解読のオモシロさもあるんですが、
それよりもチューリングの人間性に迫った内容であり、
2015年現在でも顕在する社会の諸問題も包含した
意義深い作品でした。
チューリングの存在を知ったのは、
その中でも変人扱いされていたので、
本作がどういったバランスで描いているのか興味津々でした。
「変わっている」ことに間違いないんだけど、
それでも時代を精一杯生き抜いた彼の姿が
スクリーンに克明に刻まれていて感動しました。
それをチューリング役のカンバーバッジが見事に体現。
ドラマのシャーロックも早く見ないとなーと思います。

舞台は1939年のイギリス。
チューリングがドイツ軍の使用する当時最強と言われた、
「エニグマ」という暗号を解読する任務につき、
解読に至るまでの過程と彼の人生を描いた物語。
構成としては、戦時中の解読シークエンス、
終戦後に逮捕されたシークエンス、子どもの頃のシークエンス、
上記3つから描かれていきます。
冒頭は1950年でチューリングの家に強盗が
入ったところから始まります。
そして一気に時代が1939年までシフトし、
彼が英国軍に暗号解読のために入隊する面接へ。
こういった感じで3つの時代が前後しながら
物語は進んでいくんですが、この少しのシーンで、
彼の屁理屈こね太郎な側面が全開。
しかも、それが史上最高の数学者なんだから、
同じ屁理屈こね太郎としてたまんない。
そんな彼なので仕事が始まっても周囲と上手くいかない。
仕事論としてオモシロくて、
使えないヤツのクビは遠慮なく切って、
使えるやつだけで進めようとする方法を最初に選択する。
その強権政治で実務レベルは上がるけれど、
トータルで見たときに仕事は上手くいかない。
そんな行き詰まった彼の転機となるのが、
キーラ・ナイトレイ演じるジョン・クラークという数学者。
優秀な彼女から1人での限界性を指摘されたことで、
チューリングは周囲と協力して仕事を進めようとする。
この仲良くなろうとする姿がめちゃチャーミングで最高!
(リンゴっていうのと、ジョークを話した後の周囲の顔!)
あとジョンの存在によって、
職場での女性の地位の問題がフォーカスされるのもポイント。
皆で協力しながら何とか解読しようとするものの、
なかなか進まなくて軍に中止させられそうになる。
そこで彼を助けるのが仲間の存在って言うシーンは、
グッときたし、解読に至るキッカケが仲間との談笑というのも
良いなーと思いました。(史実がどうなのかはさておき)
解読には非常に大きなマシーンを使っています。
それにたくさんのダイヤルが付いていて、
ガチャガチャ回っているのだけでも圧巻なんだけど、
解読の瞬間にぴたっと止まる。
「え、もしかして上手くいったんちゃう…?」
そして解読したメッセージをエニグマに打ち込んで、
解読できた瞬間の高揚感たるや!
これでドイツ軍を破り、平和が訪れるかと思いきや、
そんなに単純な話ではないんですなー
暗号解読したことがバレてはならない訳です。
つまり、すべての攻撃に対して反撃できてしまうとダメ。
ある程度の犠牲を伴いながら、
ここぞ!というときだけ裏をかかなきゃいけない。
「感情ではなく理性で動かなければならない」
というチューリングのセリフが印象的で、
残酷かもしれないけど真実なのかもしれません。
そして本作でもう1つのポイントが
チューリング自身が同性愛者であるということ。
当時のイギリスでは同性愛者であるだけで、
わいせつ罪として捕まるような時代。
そんなことになっていたなんて知らなかったし、
彼の同性愛のきっかけとなる子どもの頃のシーン
いじめられっ子だったチューリングが唯一、
心から仲良くなることのできた親友との関係は
見ていて微笑ましい一方で残酷な結末が待っています。
チューリングは戦後、同性愛者であることを理由に
警察に捕まってしまいます。
牢屋に入るか、ホルモン投与かの2択で
彼は自分の研究を優先しホルモン投与を選択する。
こんな制度が平気で戦後にも存在していたことに
驚いたんですが、さらに辛いのはラストシーン。
戦後の彼に残っていたのは研究のみで、
虚無感/孤独に苛まれているのが辛かった…
変化を許容しない社会が生む悲劇。
最後は皆でエニグマ解読で使った書類や機械を
燃やす打ち上げシーンとともに史実がテロップで流れる。
「自分が自分であることを誇る」マインドが
刺激された素晴らしい作品でございました。

0 件のコメント: