2015年5月24日日曜日

駆込み女と駆出し男



予告編を見て楽しそうな時代劇だなーと思い見ました。
その予想を遥かに上回る仕上がりで満足でした!
監督は原田眞人氏で彼の作品で強烈に印象に残っているのは、
なんといってもKAMIKAZE TAXI。
最近の作品は全然見れてないんですが、
色々見てみたいなーと思わされる作品でした。
原作は井上ひさしの小説なんですが、
相当味付けされていることが用意に想像できて、
コメディの味付けが本当に抜群!
満員のピカデリー新宿という鑑賞環境も伴って、
良き映画体験でございました。

舞台は江戸時代の東慶寺というお寺。
この頃は女性側からの離縁はできないんだけど、
東慶寺に駆け込めば、そこで女性が保護されて、
2年間のお務め後に離縁できる制度があったと。
そこへ駆け込んできた女性の悲喜こもごもと、
女性たちを支える人々にまつわる物語。
冒頭、駆け込む女性たちの背景を描きつつ、
いざ駆け込むというシーンから始まります。
最初はスマートにまとまっていて分かりやすいんですが、
全編にわたって言語の問題が気にかかりました。
当時の言葉とその使い方&現代で使われる話言葉が
ミックス状態なのに加えて、
セリフでの状況説明が結構多くて、
映像による補完がないから、
ストーリーが追いきれない部分があると思います。
ただストーリーが進んでいくにつれて、
本作が単なる真面目な男女の離縁物語ではなく、
コメディな部分が出てきたところで、
前述した言葉のギャップが心地よく思えてくる。
あと全体に画面がパキッとしていて、
日本の美しい自然、文化の四季折々の姿を
嫌みなくパッケージされているのも素晴らしいと思います。
離縁にまつわる話ですが、
メインとなるのは東慶寺での女性の共同生活と
主演の大泉洋を中心とする、
それを引き受ける御用宿の人々の生活。
何と言っても本作の最大の見所は
大泉洋のコメディアクターとしての豊かさ。
彼は医者見習いとして東慶寺で修行する女性たちを
診療する役目を担うんですが、
この診療シーンの悪ふざけっぷりがとにかく最高最高!
とくにハチミツ浣腸のくだりとかめっちゃ笑いました。
あと御用宿側でいうと樹木希林が凄かったなー
まんま「樹木希林」なんだけどピタッとハマってる感じ。
一方の駆け込み女ですが、メインとなるのは、
満島ひかり、戸田恵梨香、内山理名の3人。
当たり前のことなんですが、一口に離縁と言っても
それぞれに事情がある訳で、
色が異なる三者三様の離縁事情は現代にも当てはまるもの。
僕が好きだったのは満島ひかりと堤真一の離縁かなー
病気絡めて、あの展開だとベタだと思われるかもだけど、
江戸時代ならではの粋を感じました。
東慶寺の女性のみの集団生活の様子も凄く好きで、
日々掃除したり、ご飯作ったり、
マテリアル社会に生きる身分としては、
その慎ましさが身にしみました。
一番好きだったのは衣替えのシーンで夏用の浴衣?が
冬服とは異なり、様々な柄があって美しく見えました。
曲亭馬琴が物語の縦軸として描かれていて、
彼と戯曲家見習いでもある大泉洋を描くことで、
クリエイティブ論を展開するところも興味深い。
書かなきゃ何にも始まらないし、
死ぬまでその戦いは続いていくっていうねー
映画監督としての信念のように思いました。
ラストの大立ち回りはマチズモの権化を
去勢するという鮮やかな展開にサムアップ!
劇的な展開はないので地味に見えるけど、
「渋み」と「強み」を携えた素晴らしい作品だと思います。
たくさん人がいる劇場で見ることをオススメ!

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