2015年7月8日水曜日

きみはいい子



そこのみて光り輝くの呉美保監督最新作ということで、
楽しみにしていた本作。
前作も相当好きでしたが、今回も相当好きな作品でした。
「泣ける」ということが
良い映画のバロメーターではないけれど、
こんなに劇場で泣いたのは初めてかも…
一億総ツッコミ社会の中で、
肯定すること、そして受けれ入れられることの
尊さ、意義を社会問題を通じて、
見事に描き出しているなぁと。
ゴミみたいな邦画が山ほどある中で、
こういった作品に出会うと邦画舐めんなよ!
と大きな声で言いたくなりますね。
原作は短編集で、そのうち以下の物語が描かれている。
① 高良健吾演じる小学校の教師の話。
② 尾野真千子演じる母親のネグレクトの話。
③ 喜多道枝演じる半ボケのおばあちゃんの話。
3つともほぼ同じ分量で並行して話は進んでいくんですが、
前半はいずれのエピソードも不穏というか、
見ていて辛くなる描写の連続。
①だとモンスターペアレンツ、ネグレクトを含めた、
現在の小学校事情。衝撃だったのが生徒の呼び方で、
さん付けっていう…今の小学校が全部が全部、
そういう訳ではないのは承知ですが、
過度な品行方正はここまでキテるのかと。。。
②が正直一番キツイんですが、
尾野真千子のネグレクトシーンのハードさ。
どついてるシーンを直接映している訳ではないんですが、
ワンショットの中で鳴り響く叩く音が辛かった…
さらに公園のママ友間の同調圧力。
理想の母親像を体現したくてもできない、
尾野真千子のどん詰まり具合がまた辛いんですわ…
全体的に撮り方に特徴があって、
引きからじわじわズームになったり、徐々に横に振ったり。
編集という点で見れば、この3つの話を行き来するときに、
その前後で共通の音や 画で切り替えていくのも好きでした。
前半のひたすらに辛い現実の先に待っている、
後半の展開がそれらを肯定していくシークエンスになります。
肯定を「抱きしめる」という行為に集約していくのが、
根源的で素晴らしいことだなぁと思いました。
前半見ている時に①、②はネグレクトで、
やんわり繋がっていて、
③が少しノイズかなと思ってたんですね。
でも後半でそれらがビシーッ!とハマっていくところに
驚いたし、心を鷲掴みにされてしまいました。。
富田靖子の素晴らしさはハンパじゃなくて、
母親だって1人の人間であるということ、
心がフッと楽になる瞬間を求めていること、
これらを本当に体現していたと思います。
さらに自閉症の彼が放つ、
彼が思う幸せな瞬間の話に涙腺決壊。。
さらに②では池脇千鶴が肯定の役割を担うんですが、
前半での少しガサツとさえ思える行動が
良いフリになってるんですなぁ。。
相対化された価値観が極めて強い、
ママ友の中で「ボケ」の立場を取る背景を
後半で知ると見方が一気に変わってしまう。
彼女の「抱きしめる」という行動が、
鬱屈した空気を吹き飛ばす突破口になっているのも、
象徴的で好きだなーと思いました。
さらに①の高良健吾の肯定との向き合い方も、
②、③とは別で興味深くて。
彼が抱きしめるという行為の尊さに
気づくシーンがあるんですが、
ここも素晴らしく愛おしい!!
彼にとってウザい存在でしかなかった子どもが、
世界を変えていく可能性に満ち溢れているっていうねー
彼が終盤に取る行動が果たして正しいかどうか、
それは誰に分からないけれど、あきらめたら終わり!
というのが伝わってくるラストの街を走り抜けるシーン。
音楽も素晴らしくて感極まりまくりでした…
間違いなく今年ベスト級なので是非!!

追伸
RhymesterのHandsって曲があるんですが、
本作を見たあとに聞くと、効き方が異常なのでオススメです。

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