2016年3月6日日曜日

マネー・ショート



豪華俳優が一同に会して、
リーマンショックの真実を暴くという
超オモシロそうな宣伝文句に惹かれて見てきました。
スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、
ブラッド・ピット、クリスチャン・ベイルという
誰もが主役張れる級の役者たちの迫力に加えて、
演出、編集の妙と起こった現実の重みに
完全にノックアウトされました。
見る前に想像していたものと異なるという点では、
今年見た中で一番かもしれません。
金融の知識があれば、
もっと楽しめただろうなーと思ったので、
金融系で働いている人は僕に解説して欲しいです!
(自分で勉強する元気はありません…)

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

原題はThe Big Short
リーマンショックが起こる数年前から、
実際に起こるまでの経緯を、
トレーダーや銀行マンの視点から描いた作品です。
本作の主人公たちはいずれも
サブプライムローンの破綻を予測できていた人たちで
リーマンショックで一儲けに成功しています。
冒頭、住宅ローンで銀行が儲けるようになった
仕組みが紹介されライアン・ゴズリングが
狂言回しとして登場。
3つのストーリーが並行して描かれていきます。
1つ 目がクリスチャン・ベール演じる バリーの話。
彼は医師なんだけど投資ファンドを経営していて、
その数字への強さから最も早く
住宅ローンの破綻を予測し各銀行から
CDOを買い取りまくります。
その時点では住宅ローン市場が焦げ付くなんて、
誰も想像していなかったので、
彼のその行為は愚行にしか写りません。
彼のこの行動に偶然にも気づいたのが、
ライアン・ゴズリング演じるベネット。
ベネットはドイツ銀行で働くトレーダーで、
この話をスティーブ・カレル演じるバウムに話し、
一緒に一儲けしようと提案します。
これが2つ目のストーリーとなります。
(ラブ・アゲインを思い出してしまう!)
そして、3つ目が偶然にもバリーの
目論見書を見つけた若い投資家の2人。
彼らは投資家として駆け出しのため、
大きな額の取引ができないために、
ブラッド・ピット演じるベンに助けを求めます。
これらのストーリーがクロスして描かれる訳ですが、
前述した4人の役者のアンサンブルを
期待していたところがあったので、
少し残念な気持ちになりました。
しかし、過剰な情報量とテンポのよい編集によって、
見ている間はそれを感じさせない作りになっています。
ある種サブリミナル的とも言える大量のスライドショーや、
LudacrisのMoney MakerのMVを
そのまんま使ってくるのとかシビレましたねー
壮大なコラージュを見ているような印象を持ちました。
物語の合間に挟まれるQuotesもオモシロくて、
一番好きだったのが、
"Truth is like poetry. And most people fucking hate poetry."
またベネットの狂言回しに代表されるように、
メタ構造の多用も本作の特徴と言えると思います。
主人公たちがカメラ目線になるシーンも多いですし、
何よりも金融知識の解説がオモシロかったです。
CDO、CDS等の金融情報をまずは何の説明もなしに
観客に大量に詰め込んだのちに、
「そろそろ退屈ですよねー」と言い放ち、
俳優をそのまま使って説明させる作りがクール!
ウルフ・オブ・ウォールストリートで
ナオミを演じたマーゴット・ロビーの使い方は
セクシーで最高だったし、
セレーナ・ゴメスと行動学の教授が
ブラック・ジャックで説明するシーンも
磁場が歪んでいる感じでオモシロかったです。
これらのシーンは他のキャストも検討されていたようで、
他の候補を見ると、そっちも見てー!となりました(1)
(金融状況の説明という点ではジェンガのくだりも
めちゃめちゃ分かりやすかったですね)
僕が好きなキャラクターはバリーとバウム。
バリーは孤独に金融界と向き合う変人として
描かれていますが、
合間合間に家族の描写が入るところや、
投資者へのメールから溢れる人間性が
見ていてグッとくることが多かったです。
バリーとは対象的にチームで仕事をするバウムは
本作内で唯一お金儲けだけではなく、
この金融システムが腐っていることに
怒る男として描かれています。
(「fuck!」の言い方よ!!)
しかし、自分もそのシステムに乗っかって
仕事をしていることを自覚していて、
そこで葛藤する姿を描いている点が良かったなーと思います。
物語の落とし所も好きなポイントでした。
こんだけ莫大な金を儲けることに成功したわけだから、
「イエーイ!金儲け最高〜フゥー!」
という落とし方もあり得たと思うんですが、
その結果、巻き起こった悲劇を忘れていないスタンス。
ブラピのセリフがすべてを物語ってましたし、
若い2人がリーマンブラザーズを訪れるシーンの
虚無感も何とも言えない気持ちになりました。
監督のアダム・マッケイの作品は
俺たちニュースキャスターシリーズしか見れていませんが、
他の作品も見ていきたいところです。

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