2016年8月16日火曜日

VTJ前夜の中井祐樹

VTJ前夜の中井祐樹


木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのかを読んで、
興奮がまったく収まらなかったため続けて読みました。
「木村〜」において非常に重要な役目を
担っている格闘家である中井祐樹の話と、
いくつかの話をまとめたノンフィクション集です。
読み応えという観点で考えると、
「木村〜」に比べると物足りなく感じてしまいますが、
各エピソードが「木村〜」と共鳴していることがたまらない。
明らかに著者が仕掛けてきていて、
各エピソードの強度だけではない オモシロさが、
本作の特徴かと思います。
タイトルにもなっている中井祐樹の話から始まるんですが、
総合格闘技が爆発的な人気が出た2000年代。
その少し前の1995年に開催された
バリトゥードジャパン(VTJ)に中井祐樹が出場したことの意義を、
著者と彼の出会いから最後の試合までを描いています。
著者の大学の直属の後輩にあたり、
実際に試合を見ていることもあってか、
試合シーンの迫力、エピソードの数々が胸を打つ。
プロレスと総合格闘技の違いが
今のように認識されていない中で、
自分の命を懸けて、戦友の命を背負って、
リングで自分の存在と格闘技の強さを証明しようとする、
その姿勢に漢ならブチ上がるに決まってるでしょう!
僕たちが今当たり前のように享受していることには、
必ずそうなったきっかけ/背景が存在する。
ノンフィクションの醍醐味は、
そこに煌々とスポットライトを当てて、
読者、観客に気づかせてくれることにあると思います。
前述の中井祐樹のエピソードと並びで入っている、
「超二流と呼ばれた柔道家」はそれの最たるもの。
誰が何と言おうとやり抜くことの難しさと大切さが
ビシビシと伝わってくる内容で、
飽き性の僕にとっては身につまされました…
柔三部作と呼ばれる作品のうち、
まだ読んでいない七帝柔道記をこれから読みます。フォー!

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